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考え方の技術
判断に迷うとき4分で読める

批判的に考えるとは、疑うことではなく前提を掘ること

クリティカルシンキングを「相手の話にケチをつける技術」だと思っていると、身につけるほど人間関係が悪くなります。批判的に考えるの「批判」は、結論を否定することではなく、結論を支えている前提を掘り当てることです。相手の前提も、自分の前提も、同じ強さで掘る。以下はその手順です。

「批判的」は「否定的」ではない

批判的思考の目的は、相手を負かすことではなく、その主張がどこに立っているかを見ることです。同じ結論でも、立っている前提が違えば意味が変わります。「残業すべきだ」が「成果は時間に比例する」の上に立っているのか、「いま抜けたらチームが回らない」の上に立っているのかで、次にすべきことは正反対になる。結論をぶつけ合っても前進しないのは、たいていここを見ていないからです。

01手順1デカルト

結論ではなく、結論を支えている前提を書き出す

ポイント

主張の下に、それが成り立つために必要なことを並べる。

デカルトの方法的懐疑は、少しでも疑えるものをすべて捨てていく手続きでした。日常でそこまでやる必要はありませんが、捨てる前に一度「何を前提にしているか」を並べるという作法だけは使えます。主張を 1 行に書き、その下に「これが成り立つために必要なこと」を箇条書きにする。3 つも書けば、たいてい 1 つは検証していないものが混ざっています。

やってみる2ステップ中 0 完了

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02手順2カント

その前提を「誰もが使ったら」で検証する

ポイント

その規則が全員の規則になっても成り立つかを問う。

カントの定言命法は倫理の原則として知られますが、前提を検証する道具としても使えます。「自分の行動の規則が、全員の規則になっても成り立つか」を問う形です。「忙しいから返信は後回しでいい」は、全員がそうしたときに組織が回るか。回らないなら、その前提は自分だけが例外であることに依存している。相手の前提にも自分の前提にも、同じ問いを当てられるのが利点です。

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03手順3

自分の側の前提も同じ強さで掘る

ポイント

相手の主張と同じ強さで、自分の主張も前提まで掘る。

ここが抜けると、批判的思考はただの武器になります。相手の主張は前提まで掘るのに、自分の主張は結論のまま置いておく——これが最も起きやすい失敗です。目安はひとつ、掘った結果として自分の立場が動いた経験が最近あるかどうか。一度も動いていないなら、掘っているのは相手の側だけです。自分の前提を他人に掘ってもらうほうが早いこともあります。

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掘り切った先に何も無かったとき

前提を掘り続けると、どこかで「なぜそれが良いと言えるのか」に答えが無くなる地点に着きます。ニーチェがニヒリズムと呼んだのは、まさにこの、価値の根拠が抜けた状態でした。ここで止まると「どうせ何も確かでない」に落ちますが、ニーチェの答えは逆で、根拠が無いなら自分で立てるほかないというものでした。批判的思考の出口は、疑いの完成ではなく、引き受ける前提を選び直すことです。

批判的思考が向かない場面

つらさを話している相手に前提の検証を始めると、相手は「否定された」と受け取ります。これは相手が非論理的なのではなく、その場面で必要なのが検証ではないからです。批判的思考は、意思決定の前と、決めたあとの振り返りに効きます。感情が動いている最中には向きません。自分に対しても同じで、消耗しているときに自分の前提を掘るのは、多角的に見る作業ではなく自責になりがちです。

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