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PRESCRIPTION No.012PHILOSOPHER'S WORDS

自分の人格の中の人間性も、他人の人格の中の人間性も、決して単なる手段としてではなく、常に同時に目的として扱え。

イマヌエル・カント/道徳形而上学の基礎づけ/近代ドイツ

一言でいうと

人を役に立つ道具としてだけ扱ってはならない、という道徳の原則。他人だけでなく自分自身もその対象に含めている点が、人間関係にも働き方にも効く。

くわしい解説

これはカントが道徳の最高原理(定言命法)を言い換えた定式の一つで、「人間性の定式」と呼ばれます。カントは、行為が道徳的に正しいかどうかは結果の良し悪しではなく、行為の根っこにある方針が誰にとっても通用するかで決まると考えました。そのうえで、理性を持つ存在はそれ自体として価値を持つ「目的」だ、と言い切ります。

大事なのは「単なる手段として」の「単なる」です。カントは、人に仕事を頼んだり、店員から物を買ったりすること自体を禁じていません。私たちは日々お互いを手段として頼り合っています。禁じられているのは、相手が同意できない形で、相手の意思を素通りして利用することです。だますこと、脅すことが典型例になります。

見落とされがちですが、「自分の人格の中の人間性」も対象に入っています。カント自身、自分を単なる手段として扱う例を挙げてこの原則を説明しました。評価や収入のためだけに自分をすり減らすことも、この原則に照らせば問い直すべきあり方だと読めます。カントの倫理は厳格だと言われますが、その厳格さは自分自身を守る方向にも向いています。

どんな悩みに効くか

職場で「自分はただの駒だ」と感じるとき、あるいは誰かを都合よく使っている気がして後ろめたいときに。相手がこのやり方に同意できるかを一度だけ確かめてみてください。そして同じ問いを、自分の働き方にも向けてみること。自分もまた、手段でしかない存在ではありません。