PHILOSOPHER'S WORDS
幸福は理性の理想ではなく、想像力の理想である。
— イマヌエル・カント/人倫の形而上学
一言でいうと
幸福には誰にでも当てはまる定義がなく、各自が思い描く像でしかない。だから幸福を人生の指針にすると足場が定まらない、というカントらしい警告。
くわしい解説
カントは幸福を軽んじたわけではありませんが、道徳の基準にはできないと考えました。理由は単純で、幸福の中身が人によって、また同じ人でも時期によって変わるからです。理性が扱えるのは誰にでも妥当する形式であり、幸福はその条件を満たしません。
「想像力の理想」という言い方が的確です。私たちは幸福を、具体的な場面の像として思い描きます。広い家、認められる仕事、穏やかな家庭。ところが実際にそれを手に入れると像は更新され、次の像が現れる。像は経験を先取りしているだけなので、追いつくことがありません。
そこでカントは、行為の正しさの基準を幸福ではなく義務に置きました。結果として幸福になるかどうかは分からないが、なすべきことは分かる。幸福が定まらないからこそ、定まるものを別に用意しておく——これが彼の解決策です。
どんな悩みに効くか
「これを手に入れれば楽になる」と思って走り、着いたら次の目標が現れる——その繰り返しに疲れたときに。目標を捨てる必要はありません。ただ、幸福の像とは別に「像が達成できなくても続けたいこと」を一つ持っておくと、足場が像に依存しなくなります。
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