PHILOSOPHER'S WORDS
足るを知る者は富む。
— 老子/道徳経 第33章
一言でいうと
富は所有量ではなく、どこで十分と見なせるかで決まる。足りないという感覚は量の問題ではなく基準の問題だ、という指摘。
くわしい解説
第33章は、他人を知る者は智、自らを知る者は明、他人に勝つ者は力あり、自らに勝つ者は強し、と対句を重ねたうえでこの一句を置きます。外向きの尺度と内向きの尺度を並べ、後者に軍配を上げる構成です。
「足るを知る」は我慢とは違います。我慢は、足りないと感じたまま欲しがるのを抑える状態なので、緊張が持続します。老子が指しているのは基準そのものの置き直しで、その位置が動けば、同じ手持ちのまま欠乏感が消えるという話になります。
現代の消費環境では、この基準は放っておくと外から更新され続けます。比較対象は常に上に設定され、達成のたびに次の水準が現れる。カントが幸福を「想像力の理想」と呼んだ問題と、老子の処方はここで同じ地点に届いています。外から更新され続ける基準を、自分の側で一度止めて置き直すこと。それが「足るを知る」の「知る」に込められた作業です。
どんな悩みに効くか
収入や持ち物を人と比べて焦るときに。増やす努力をやめる必要はありません。ただ、いくらあれば十分かを一度だけ具体的な数字や条件で書いてみてください。書けないなら、その焦りは不足ではなく、基準が定まっていないことから来ています。
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